理学療法士ランナーのラン&ワークブログ

40代子育て中おじさん理学療法士ランナーの練習日誌とサブ4を目指す初心者へのランニングに役立つリハビリの知識を中心とした日常の記録

リハビリ勉強ノート32 脳卒中の分類について1

かなり久しぶりのリハビリ勉強ノート。

仕事が忙しいのを理由にさぼりまくりでした。

今回は脳卒中(のうそっちゅう)と脳梗塞(のうこうそく)って何が違うの?という質問に対しての解説です。

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脳卒中とは

今では仕事で毎日目にするので当たり前になってしまっていますが、僕も学生時代に勉強するまではさっぱり脳梗塞だとか脳溢血(のういっけつ)だとかわかりませんでした。

ここからはご脳卒中について確認、勉強していきたいと思います。

脳卒中、医学界でもよく使われるのですが正式には脳血管障害といいます。

脳血管障害は脳梗塞脳出血クモ膜下出血、一過性脳虚血発作の総称で今回は実際にはまだ病気の完成していない一過性脳虚血発作は省いて説明していきます。

 

脳卒中の病型分類

下の図は脳卒中(脳血管障害)を病気の型により分類した病型分類です。

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脳卒中はまずは血管が破れて出血する頭蓋内出血と血管が詰まる脳梗塞に分けられます。

脳梗塞は病型分類としてラクナ、アテローム血栓性、心原性に分類されます。

頭蓋内出血はくも膜下出血と脳内出血(脳出血)に分類されます。

長くなってしまうので本日は脳梗塞についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

 

脳梗塞の病型分類と機序分類

脳梗塞の分類では先ほどの病型分類に加えて、どのような仕組みで起こったのかを分類する機序分類があります。

機序分類では血栓性、塞栓性、血行力学性として分類されます。

米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)では病型分類と機序分類の組み合わせで病型診断を行うことを提唱しています。

たとえば動脈硬化による頸動脈プラークがあって、そこからはがれた血栓が遠位の中大脳動脈を閉塞した場合、”塞栓性機序によるアテローム血栓脳梗塞”などと表現します。

病型分類と機序分類の関係を図に表すと以下のようになります。

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ちょっとわかりにくいかもしれませんが、アテローム血栓脳梗塞で見ると、アテローム血栓脳梗塞血栓によってでも、塞栓によってでも、血行力学によってでも起こりうるということになります。

それぞれがどう違うかというと

  • 血栓性はアテローム硬化で狭くなった血管に血栓(血の塊)ができて詰まってものです。
  • 塞栓性は頸動脈のようなより心臓に近い大きな血管の血栓がはがれて塞栓子となり、脳動脈に詰まったものです。
  • 血行力学性は心臓に近いの大きな動脈が狭くなることでその先の脳の血管の血流量が減少し、そこに血圧の低下が加わることで虚血(血流が届かなくなる状態)となってしまう状態です。

一方で

心原性脳塞栓症は心房細動を原因として心臓内にできた血栓が脳動脈に塞栓子として詰まることで起こります。

なので機序分類では塞栓性しかありません。

塞栓性アテローム血栓脳梗塞のことを(AtoA)とも呼びますが心原性とAtoAとの違いは心原性の方が塞栓子が大きいため梗塞が大きいこと、運ばれる間にいくつかに分かれ数カ所に分かれて多発することがあることなどが挙げられます。

また出血性梗塞を起こしやすいことも特徴です。梗塞といっていますが、病態としては出血で、梗塞内に出血が収まっている場合は症状の悪化はありませんが、梗塞外まで広がると症状が増悪するため注意が必要です。

脳梗塞発症後2週間程度はリスクがあります。梗塞後ですがあとに説明する脳出血に準じて管理し、高血圧に注意が必要です。

 

最近は血栓回収術という脳の大きい血管に詰まった血栓カテーテルで取り除く治療がありますが、取り除いた血栓の色がアテローム性だと脂肪分が多く白っぽく、心原性だと血液成分により赤いという特徴があります。

 

ラクナ梗塞は脳動脈の穿通枝領域(細い先の方の血管)にできる15mm以下の小さい梗塞をいいます。発症時に意識消失がないのが特徴です。アテローム血栓性との違いは大きさのみです。

 

病型分類と機序分類を合わせてみることがなぜ大切かというと治療方針やリハビリを行う上での注意事項が変わってくるからです。

 

アテローム血栓性であればどの機序かにより血栓性であれば急性期は血圧が高くても血圧を下げるような治療はしませんし、血行力学性であれば脱水や血圧の低下は絶対に避けなければいけません。塞栓性であればまだはがれかかっている血栓があるかもしれないのでエコー検査の結果を確認したり、血栓が固まりにくくするような薬剤が必要かもしれません。

心原性では心臓内の血栓の確認や心房細動のコントロール血栓を作りにくくする薬剤が必要で、出血を起こしやすいので血圧が上がりすぎるのは避ける必要があります。

ラクナ梗塞では安静は必要ないと言われています。

 

病院勤務のリハビリスタッフは検査データや画像データが手に入るので病気の情報が簡単に手に入りますが、施設や在宅サービスのスタッフはこうした情報をえられないため、使用している薬剤は病歴聴取(問診)などからおおよその予測をつけて介入する必要があります。

 

基本的には病院の急性期治療は対症療法なので血管リスクが高いという体質は生活習慣の改善(食事、運動、睡眠、ストレスなどの管理)でしか変えられません。

退院後の生活をどうするかが非常に重要になります。

 

ちょっと長くなってしまったので出血については次回の勉強ノートで!